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発熱、痛み、解熱鎮痛薬

ロキソニンなどのNSAIDsがインフルエンザ脳症を引き起こすのは本当か?NSAIDsの使用を注意すべきウイルス性疾患とは?

ロキソニンなどのNSAIDsがインフルエンザ脳症を引き起こすのは本当か?

『インフルエンザの時に、ロキソプロフェン(商品名ロキソニン)などの解熱鎮痛薬(NSAIDs)を使用すると、「インフルエンザ脳症」を誘発する』と書いてある個人の医療サイトが複数あったので、ちょっと調べてみました。

まず、ロキソニン®の添付文書とインタビューフォームを調べてみましたが、インフエルエンザウイルスや他のウイルス疾患に使用した際の記述は見つかりませんでした

次に、ジクロフェナク(商品名ボルタレン)、メフェナム酸(商品名ポンタール)について調べてみました。
まず、添付文書情報は以下の様でした。

ボルタレン®添付文書
禁忌
インフルエンザの臨床経過中の脳炎・脳症の患者

重要な基本的注意
ジクロフェナクナトリウム製剤を投与後にライ症候群を発症したとの報告があり、また、同効類薬(サリチル酸系医薬品)とライ症候群との関連性を示す海外の疫学調査報告があるので、本剤を小児のウイルス性疾患の患者に投与しないことを原則とするが、投与する場合には慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察すること。

ライ症候群:水痘、インフルエンザ等のウイルス性疾患の先行後、激しい嘔吐、意識障害、痙攣(急性脳浮腫)と肝臓ほか諸臓器の脂肪沈着、ミトコンドリア変形、AST(GOT)、ALT(GPT)、LDH、CK(CPK)の急激な上昇、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖等の症状が短期間に発現する高死亡率の病態である。

ポンタール®の添付文書
重要な基本的注意
小児のインフルエンザに伴う発熱に対しては、原則として本剤を投与しないこと

さらに、ちょっと古いですが、「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」の平成11年度の研究によると1)
インフルエンザ脳炎・脳症例181例についての解析が行われたが、特に52例の死亡例のうち、ジクロフェナクナトリウム又はメフェナム酸の使用群と未使用群とを比較した結果、使用群について、わずかながら有意に死亡率が高いと報告された。』
とあります。

これは、「すでにインフルエンザ脳炎・脳症になっている人」に解熱剤を投与した場合の話です。
インフルエンザの患者にジクロフェナクナトリウム又はメフェナム酸を投与したら脳炎・脳症を引き起こした、という報告ではありません。

こちらは平成12年に発表された緊急安全性情報です。
インフルエンザ脳炎・脳症患者に対するジクロフェナクナトリウム製剤の使用について

なお、日本でのインフルエンザの学童における罹患数は、年間50万~100万人とされ、このうち、脳炎・脳症となる症例(インフルエンザ脳炎・脳症)は100~300人、その死亡率は30%前後とされています1)

まとめ

ロキソプロフェン
●インフルエンザや他のウイルス性疾患への投与制限はない。

ジクロフェナク
●インフルエンザ脳炎・脳症の患者への使用は禁忌。
●インフルエンザ脳炎・脳症の患者に使用するとわずかながら有意に死亡率が高い。
●ライ症候群を発症した報告があるため、小児のウイルス性疾患(水痘、インフルエンザなど)は原則として使用しないこと。成人への使用制限はなし。

メフェナム酸
●小児のインフルエンザに伴う発熱に対しては、原則として使用しないこと。成人への使用制限はなし。
●インフルエンザ脳炎・脳症の患者に使用するとわずかながら有意に死亡率が高い。

<結論>
今回調べた限りでは、ロキソプロフェンや他のNSAIDsが「インフルエンザ脳症を引き起こす」という資料は見つかりませんでした。

参考:
1)PMDA「インフルエンザの臨床経過中に発症した脳炎・脳症の重症化と解熱剤(ジクロフェナクナトリウム)の使用について


NSAIDsの使用を注意すべきウイルス性疾患

前半で述べたNSAIDs以外についても、添付文書で調べてみました。

重要な基本的注意に、
『サリチル酸系製剤の使用実態は我が国と異なるものの、米国においてサリチル酸系製剤とライ症候群との関連性を示す疫学調査報告があるので、本剤を15歳未満の水痘、インフルエンザの患者に投与しないことを原則とするが、やむを得ず投与する場合には、慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察すること』
と記載があるものに、アスピリン(商品名バファリン、バイアスピリン)、PL配合顆粒®、ピーエイ配合錠®などがありました。

水痘、インフルエンザの患者に投与しないこととするのは原則15歳未満の小児で、成人は対象ではありあません。
低用量アスピリンは小児の川崎病治療に使用されるので、水痘、インフルエンザのときは慎重に投与する必要があります。

NSAIDsの使用が制限されるウイルス性疾患


15歳未満の水痘、インフルエンザ

アスピリン、PL配合顆粒®、ピーエイ配合錠®は原則使用しないこと

小児のウイルス性疾患(水痘、インフルエンザなど)
ジクロフェナクは原則使用しないこと

インフルエンザ脳炎・脳症
ジクロフェナクは禁忌

小児のインフルエンザに伴う発熱
メフェナム酸は原則使用しないこと

次の薬剤は、ウイルス性疾患への使用に関する記載はありませんでした。
●ロキソプロフェン
●イブプロフェン(商品名ブルフェン)
●インドメタシン(商品名インテバン坐剤)
●セレコキシブ(商品名セレコックス) 
●チアラミド(商品名ソランタール)
●アセトアミノフェン(商品名カロナール)
注意:厳密にはアセトアミノフェンはNSAIDsに分類はされていません。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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