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お酒、アルコール

アルコール依存症の薬:セリンクロの作用機序、特徴。~飲酒量を減らす新薬~

アルコール依存症とは

飲酒により得られる効果には「快」と「不快」がある。

快を求めて飲酒をすることを「正の強化」といい、アルコールを繰り返し摂取することで次第に快が減少し、代償的に不快が強くなり不快を避けるために飲酒をすることを「負の強化」という。

この「正の強化」と、慢性的に多量飲酒を繰り返すことで得る「負の強化」により飲酒欲求がさらに高まり、飲酒行動をコントロールする能力が障害される疾患がアルコール依存症である。

アルコールは「肝障害」や「うつ」など多くの疾患と関わりが深い。
また、依存症とまでいかなくても、アルコールが原因で日常生活・健康・仕事・家庭生活に重大な支障を来す場合があり、社会的・経済的な影響が大きいことが問題となっている。

飲酒行動を自分自身でコントロールできないような場合は薬物治療を検討するが、多くの場合は「自分は大丈夫」と考えてまともに治療を受けない。このため、本人だけではなく周囲の協力が必須である。

事実、日本ではアルコール依存症の潜在患者数が100万人なのに対し、治療を受けているのはわずか5万人ほどにすぎない

現在、アルコール依存症に使用する抗酒薬として3種類ある。

抗酒薬の種類と適応
1:ノックビン®、シアナマイド内用液1%「タナベ」:慢性アルコール中毒に対する抗酒療法

2:レグテクト®:アルコール依存症患者における断酒維持の補助

3:今回紹介するセリンクロ®:アルコール依存症患者における飲酒量の低減

 

先程述べたアルコールによる「強化作用」には、内因性オピオイドが関与している。

セリンクロ®はオピオイド受容体に作用し、内因性オピオイドにより引き起こされる快・不快の情動を調節することにより飲酒量低減効果を発現すると考えられている。

アルコール依存症の治療目標は、原則、断酒の達成とその継続であるが、セリンクロ®は飲酒量の低減に適応があり、それを治療目標としていることが大きな特徴である

参考までに、
純アルコールとして1日平均、男性で60g超、女性で40g超の飲酒量を超えている場合は多量飲酒と見なされる。

《純アルコール量の目安》
ビール中びん1本(500ml)=20g
日本酒1合(180ml)=22g
ウイスキーダブル(60ml)=20g
焼酎(25度)1合(180ml)=36g
ワイン1杯(120ml)=12g

簡易的なアルコール依存症のスクリーニング(分類)テストは「KIRIN」のサイトで30秒もあればできるのでやってみてはどうだろう。

このテストは10項目の質問からなり、40点満点のうち
1~9点だと「危険の少ない飲酒群」
10~19点だと「危険な飲酒群」
20点~だと「アルコール依存症疑い群」
と評価する。

 

 

セリンクロ®(成分ナルメフェン)とはどんな薬か

<特徴>
ハードルの高い「断酒」ではなく、「減酒」を治療目標とする初めての薬剤であることが最大の特徴。

オピオイド受容体に作用し、飲酒しても気分がさほど高揚しなくなり、だんだんと飲みたくなくなり、飲酒量も減っていくことが期待できる。
オピオイド受容体に作用するため、オピオイド製剤とは併用注意・禁忌のことがある。併用薬には要注意!!

「アルコール依存症に係る適切な研修」を修了した医師しかこの薬を使用できない。そのため、患者が希望するからと好き勝手には処方できない。

 

<作用機序>
ナルメフェンは快感を制御するμオピオイド受容体とδオピオイド受容体に対しては拮抗薬として、不快感を制御するκオピオイド受容体に対しては部分的作動薬として作用することにより飲酒量の低減作用を発揮すると考えられている。

 

<適応>
アルコール依存症患者における飲酒量の低減。
ノックビン®、シアナマイド内用液1%「タナベ」は「慢性アルコール中毒に対する抗酒療法」の適応。
レグテクト®は「アルコール依存症患者における断酒維持の補助の適応」。

 

<用法用量>
1日1回1錠(=10mg)を飲酒の1〜2時間前に服用。
症状により適宜増量することができるが、1日量は2錠(20mg)を超えないこと。
飲酒を継続しながら無理なく治療できる。服用タイミングは飲酒の直前ではなく、1~2時間前。

 

<飲み忘れたら?>
飲酒の1~2時間前に服薬できなかった場合でも、本剤の有効性を確実に発揮させるために気付いた時点で服薬してよい。ただし、飲酒終了後には服薬しないこと。

 

<使用上の注意>
重度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類C)には、1日最高用量を10mgとすること。

 

<禁忌>
●オピオイド系薬剤(鎮痛、麻酔)を投与中 or 投与中止後1週間以内の患者
 →オピオイドの離脱症状(又はその悪化)があらわれるおそれがある。

●オピオイドの依存症又は離脱の急性症状がある患者
 →オピオイドの離脱症状(又はその悪化)があらわれるおそれがある。

<併用禁忌の薬剤の例>
モルヒネ(MSコンチン®等)
フェンタニル(フェントス®等)
フェンタニル・ドロペリドール(タラモナール®)
レミフェンタニル(アルチバ®等)
オキシコドン(オキシコンチン®等)
メサドン(メサペイン®)
ブプレノルフィン(ノルスパン®等)
タペンタドール(タペンタ®)
トラマドール(トラマール®等)
トラマドール・アセトアミノフェン(トラムセット®)
ペチジン
ペチジン・レバロルファン(ペチロルファン®)
ペンタゾシン(ソセゴン®等)
ヒドロモルフォン(ナルサス®等)

●セリンクロ®のμオピオイド受容体拮抗作用により、μオピオイド受容体作動薬に対して競合的に阻害することでオピオイド受容体作動薬の離脱症状を起こすおそれがある。

●セリンクロ®によりオピオイド受容体作動薬の鎮痛作用を減弱させるため、効果を得るために必要な用量が通常用量より多くなるおそれがある。

併用薬には要注意! 特に整形処方のトラムセット®!

<併用注意>
併用禁忌の薬剤を除くオピオイド系薬剤

例:コデイン、ジヒドロコデイン、ロペラミド(ロペミン®)、トリメブチン(セレキノン®)等
●セリンクロ®によりオピオイド受容体作動薬の効果を減弱させるため、効果が得られないことがあるので、注意すること。

 

<副作用>
主な副作用は悪心(31.0%)、浮動性めまい(16.0%)、傾眠(12.7%)、頭痛(9.0%)、嘔吐(8.8%)、不眠症(6.9%)、倦怠感(6.7%)など。

その他、様々な副作用の報告もあるので、一度は添付文書で確認をすること。

 

他のアルコール依存症に使用される薬

ジスルフィラム(ノックビン®)
シアナミド(シアナマイド内用液1%「タナベ」)

<適応>
慢性アルコール中毒に対する抗酒療法

<作用機序>
肝臓中のアルコール分解酵素(アルデヒドデヒドデヒドロゲナーゼ)を阻害することで、飲酒時の血中アセトアルデヒド濃度を上げ、顔面紅潮、熱感、頭痛、悪心・嘔吐などの急性症状を「わざと」引き起こす。

<特徴>
アルコール摂取による不快感を強制的に出させる薬。嫌な気持ちになるくらいなら、お酒を飲むのはやめよう!と思わせるのがこれらの薬剤の特徴。
これらの薬剤は飲酒欲求そのものを軽減する薬剤ではないため、服薬継続がなされないことも多い。

 

アカンプロサート(レグテクト®)

<適応>
アルコール依存症患者における断酒維持の補助

<作用機序>
アルコール依存症患者の脳で亢進する興奮性神経(グルタミン酸作動性神経)を抑制することでイライラ感や飲酒欲求をやわらげると考えられている。

<特徴>
断酒維持の補助薬。
レグテクト®は断酒の意志があり、離脱症状に対する治療の後に心理社会的治療を行うアルコール依存症患者に対して断酒維持効果を高める作用を有する。
上部消化管障害を軽減するため、腸溶性フィルムコーティング錠となっている。

<服用の注意点>
食後服用の薬。空腹時に投与すると、食後投与と比較して血中濃度が上昇するおそれがある。

3種類の薬の比較

ノックビン®、シアナマイド:
飲酒するとアルコールによる不快感が出やすくなり、
飲みたい気持ちをなくさせる。

レグテクト®:
飲酒欲求そのものをやわらげる。

セリンクロ®:
飲酒を継続しながら、飲酒量を減らせる。

 

 

最後に…

過度な飲酒は本人だけではなく、家族や社会にも影響を与えうる。
チャンピックス®により禁煙外来への受診がすすんだように、アルコール依存症の薬があるという認知が高まり、これまで未治療だった患者が専門治療を受ける機会が増えることを期待したい。

雑談だが、
レグテクト®錠333mgとレグナイト®錠300mgが似すぎていていつも混乱する。

レグナイト®はレストレスレッグス症候群の薬。

レグナイト®の命名の由来:
レストレスレッグス症候群(Restless legs syndrome)に対してグッドナイト(Good night=Good nite)をもたらす。

ちなみにレグナイト®の成分はガバペンチン エナカルビル。
ガバペンチン(ガバペン®)はてんかんの薬。

レグテクト®の命名の由来:
アルコールによって不均衡になった神経の働きを調節(regulation)し、断酒維持の状態を守る(protect)。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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