パイロットが服用できる抗アレルギー薬は？インペアードパフォーマンスとは？

パイロットが服用できる抗ヒスタミン薬（抗アレルギー薬）

日本国内では、抗ヒスタミン薬（抗アレルギー薬）のうち次の4つの薬剤なら、条件を満たせばパイロットが服用可能と考えられる。
注：ビラスチンとデスロラタジンの解釈が間違っている場合はご指摘ください。

フェキソフェナジン（アレグラ®）
1日2回服用。

ロラタジン（クラリチン®）
1日1回、食後に服用。

デスロラタジン（デザレックス®）
1日1回服用。デスロラタジンはロラタジンの活性代謝物。

ビラスチン（ビラノア®）
1日1回空腹時に服用。食後の処方が出たら疑義照会を。
参考：空腹時及び食後（高脂肪食）に本剤20mgを単回経口投与したとき空腹時に比べ食後投与時のCmax及びAUC0-tはそれぞれ約60％及び約40％低下（添付文書より）。

根拠となる資料

アレグラのIF
「成人における航空機乗組員を想定した試験、自動車運転能力シミュレーター試験、ワープロ入力作業試験において、作業能率に及ぼす影響はプラセボとの間に有意差を認めなかった（海外データ含む）。」

クラリチン®の添付文書
「空軍パイロット及び民間航空会社パイロット（40例）を対象にフライトシミュレーション試験を実施した結果、ロラタジン10mgは、プラセボと比較してパイロットの航空機操作能力に影響を与えなかった（外国人データ）。」

パイロットの花粉症治療における規制　医実報告第58巻第3号（平成30年9月）
●フェキソフェナジンとロラタジンに関する記載
「2017年11月現在、眠気などの副作用が少ないとされる第2世代抗ヒスタミン薬のうち、フェキソフェナジン（アレグラ®）及びロラタジン（クラリチン®）については、日米ともに内服直後の飛行が可能となっている。」

「国土交通省航空局では、内服開始から副作用がないことを、（航空身体検査）指定医又は航空産業医（乗員健康管理医）が確認すれば、以降は内服直後の飛行が可能である。」

「航空自衛隊においては米国空軍の指針に準拠し、内服開始から72時間の観察において副作用が無く症状が安定していれば、以降は内服直後の飛行を可能としている。」

●デスロラタジンに関する記載
「デスロラタジンについて、FAA（米国連邦航空局）及び米国海軍のみ副作用の観察期間を設け内服直後の飛行を許可している。」

次に、ビラスチン、デスロラタジンが国内でも服用可能と判断できる資料が、「航空身体検査マニュアル」と「航空機乗組員の使用する医薬品の取扱いに関する指針」。
＊解釈が間違っている場合はご指摘してください。

航空身体検査マニュアル　令和元年6月17日一部改正（国空航第323号）
4.評価上の注意

4-2 アレルギー性の諸症状が外用薬（点鼻、点眼及びステロイド含有の外用薬を含む。免疫抑制薬はタクロリムス水和剤に限る。）、内服薬（フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン及びビラスチンに限る。）又は減感作療法（舌下免疫療法を含む。）により抑制されている場合は、適合とする。

なお、減感作療法を行う場合は、最低1週間の観察期間を経て、使用医薬品の副作用の有無、治療状況を確認するとともに、皮下注射後24時間以内は航空業務を行ってはならない。

ただし、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン及びビラスチン以外の第二世代の抗ヒスタミン薬を服用する場合は、眠気・集中力低下等の副作用がないことを指定医又は乗員健康管理医が確認した場合は、適合とする。ただし、少なくとも通常投与間隔の2倍の時間は航空業務を行ってはならない。

航空機乗組員の使用する医薬品の取扱いに関する指針　令和元年6月17日一部改正国空航第327号

B 航空業務に当たり、指定医又は乗員健康管理医において個別の確認が必要な医薬品
●鎮静作用の無い抗ヒスタミン薬（第二世代の抗ヒスタミン薬に限る）
過去の使用経験により、眠気・集中力低下等の副作用が無いことが指定医又は乗員健康管理医によって確認されなければならない。
ただし、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン及びビラスチン以外の内服薬を使用後は少なくとも通常投与間隔の2倍の時間（1日3回の服用が指示される場合は16時間､1日2回の場合は24時間、1日1回の場合は48時間）は航空業務に従事してはならない。

インペアード・パフォーマンスとは？

抗ヒスタミン薬を服用すると、眠気が出たり、いつの間にかパフォーマンスが低下（集中力、判断力、作業効率の低下）することがある。
インペアード・パフォーマンスとは、このパフォーマンス低下をさす言葉である。
インペアード・パフォーマンスは本人が気づかないうちに生じることがあり、仕事などに影響が出る場合もあるため注意が必要である。