内服オピオイドにナロキソンが含有されている理由は…
ペンタゾシンにはソセゴン®錠とソセゴン®注射液があるが、内服のソセゴン®錠にのみ、麻薬拮抗剤であるナロキソンが含まれている。
ペンタゾシン:オピオイド受容体に作用
ナロキソン:オピオイド受容体拮抗作用
ソセゴン錠®:ペンタゾシン+ナロキソン
ソセゴン®注射液:ペンタゾシン
相反する作用を持つ成分をなぜ1錠に混ぜたのか。
それは、ペンタゾシンの錠剤を水に溶解し、抽出されたペンタゾシンを注射するという不適切な使用が、ずーーっと前にアメリカで問題となったことがあるからだ。
この対抗策として、ナロキソンを配合する方法がとられたのである。
オピオイド受容体拮抗薬であるナロキソンは、注射剤として使用すると強いオピオイド拮抗作用を示すが、経口投与では肝の初回通過効果により速やかに代謝されるという特徴がある。
つまり、ソセゴン®錠(=ペンタゾシン+ナロキソン)を溶解し注射投与したとしても、ペンタゾシンの効果は得られないわけである。
なお、ソセゴン®錠(=ペンタゾシン+ナロキソン)を服用すると、ナロキソンは肝で代謝されるため効果は出ず、ペンタゾシンの効果だけが出る。
考えた人は頭がいいな!と思う。
同様の対策をとっている製剤に、
2019年9月に発売されたオキシコドン徐放錠NX「第一三共」と、
2020年9月に発売されたオキシコドン錠NX「第一三共」がある(NXのつかない、オキシコドン錠「第一三共」とは別物!)。
オキシコドン錠NX/徐放錠NX「第一三共」にはオキシコドンとナロキソンが入っており、溶かして注射しても効果がでない。添付文書には以下の記載がある。
本剤を注射しないこと。(本剤には水に不溶性である添加物が含まれており、肺塞栓、血管閉塞、潰瘍、膿瘍を引き起こすなど、重度で致死的な事態を生じることがある。
また、本剤には乱用防止を目的として麻薬拮抗剤ナロキソンを添加している。本剤を注射するとオキシコドンの作用が拮抗され、麻薬依存患者では退薬症候を誘発するおそれがある。)
ソセゴン®錠、オキシコドン錠NX/徐放錠NX「第一三共」以外で、薬物乱用の防止対策がとられている薬剤には「オキシコンチンTR錠」、「タペンタ®錠」がある。
ともに、
●錠剤強度が高く、粉砕することが困難
●水を含むとゲル化するため、溶かすことが困難
という特徴を有する。
乱用防止対策がとられている製剤
ソセゴン®錠
オキシコドン錠NX「第一三共」
オキシコドン徐放錠NX「第一三共」
オキシコンチンTR錠
タペンタ®錠
おまけ:肝臓の初回通過効果の影響を受ける薬剤
ナロキソン同様、肝臓の初回通過効果の影響を受け、内服しても効果が出ない有名なものといえば?
そう、ニトログリセリンですね。
なので、ニトロペン®舌下錠は絶対に飲んではダメ。効果が出ないから。
服薬指導の際は、「舌下で使用してください」、だけではなく、「飲んでも効果が出ないから、必ず舌下で使用してください」という説明が大事である。
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