米国では、オキシコドンの乱用が多く、その対策としてオキシコドン乱用防止製剤が2010年に発売され、オキシコドンの乱用が減少したという報告がある。
Clin Pharmacol Ther. 2016 Sep;100(3):275-86.
日本では、2017年12月にオキシコドン乱用防止製剤であるオキシコンチン®TR錠が発売された。
オキシコンチン®TR錠の特徴
従来品のオキシコンチン®錠は溶かすことができ、不適切な注射投与が可能だったが、オキシコンチン®TR錠はそれができないよう以下の工夫がなされている。
●従来品に比べ、錠剤強度が高く、粉砕することが困難。
●水を含むとゲル化するため、溶かすことが困難。
医療用麻薬タペンタ®錠(タペンタドール塩酸塩徐放錠)の特徴
●錠剤強度が高く、粉砕することが困難。
●水を含むとゲル化するため、溶かすことが困難。
オキシコンチン®TR錠と同じ特徴を持ち、不適切な注射投与ができないようになっている。
オキシコンチン®錠とオキシコンチン®TR錠の徐放機構の違い
オキシコンチン®錠
アミノアルキルメタクリレートコポリマーRSと、ステアリルアルコールの二重膜による徐放性マトリックス構造を有しており、成分が徐々に放出される。
オキシコンチン®TR錠
添加物であるポリエチレンオキシドが徐放のカギとなる。
ポリエチレンオキシドは水を含むとゲル化する。
本剤を服用後は、ゲル化されたポリエチレンオキシド内から、成分であるオキシコドンが徐々に放出される。
オキシコンチン錠とTR錠の共通点
「癌性疼痛」に用いる場合は、「用法用量」、「用法・用量に関連する使用上の注意」は従来品もTR錠も同じ。
以下は簡略して紹介。
<効能・効果>
中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
<用法・用量>
通常、成人には1日10〜80mgを2回に分割服用。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
初回投与
(1) オピオイド鎮痛薬を使用していない場合
疼痛の程度にもよるが、1日量10〜20mgくらいでスタートして様子見。
(2) モルヒネ製剤(経口)から変更する場合
モルヒネ製剤1日投与量の2/3量を1日投与量の目安とすることが望ましい。
(3) 経皮フェンタニル貼付剤から本剤へ変更する場合
経皮フェンタニル貼付剤剥離後にフェンタニルの血中濃度が50%に減少するまで17時間以上かかる。
剥離直後の本剤の使用は避け、本剤の使用を開始するまでにフェンタニルの血中濃度が適切な濃度に低下するまでの時間をあける。
本剤の使用は、低用量から投与することを考慮すること。
増量
患者の状態を観察し、適切な鎮痛効果が得られ副作用が最小となるよう用量調整を行う。
5mgから10mgへの増量の場合を除き、増量の目安は使用量の25〜50%増とする。
減量
連用中における急激な減量は、退薬症候があらわれることがあるので行わないこと。
副作用等により減量する場合は、患者の状態を観察しながら慎重に行うこと。
2020年10月、オキシコンチン®TR錠に慢性疼痛の適応追加!
慢性疼痛に用いる場合
通常、成人にはオキシコドン塩酸塩(無水物)として1日10〜60mgを2回に分割経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。
処方、調剤時の注意点は以下の通り。
オキシコドン塩酸塩水和物徐放製剤の使用に当たっての留意事項について 令 和 2 年 1 0 月 2 9 日
(別添)確認書を用いた管理体制の全体図
慢性疼痛患者への処方・使用に当たっては、以下の手順に従うこと。
① 医師は製造販売業者の提供する講習を受講
② 製造販売業者は講習を修了した医師に対し当該医師専用の確認書を発行
③ 医師及び患者は処方時に確認書に署名
④ 確認書の一方を医療機関が保管し、もう一方を患者に交付
⑤ 薬剤師は患者から麻薬処方せんとともに確認書の提示を受け調剤し、確認書の内容を説明の上、薬局で保管なお、確認書が確認できない場合には、別添の流れに従い、調剤の可否を判断
なお、癌性疼痛の患者に本剤を処方・使用するに当たっては、医師は講習の受講等は必要なく、確認書も交付されないこと。
食事による、オキシコンチン®TR錠への影響
空腹時投与と比較すると、食後(高脂肪食)の服用によりオキシコンチン®TR錠のCmax 及びAUC は上昇する。
食事の影響
1) 健康成人16例においてオキシコンチンTR錠10mgを高脂肪食摂取後に投与したとき,空腹時に比較してオキシコドンのCmaxが73%,AUCが38%増加した。2) 健康成人においてオキシコンチンTR錠40mgを高脂肪食摂取後(34例)に投与したとき,空腹時(28例)に比較してオキシコドンのCmaxが60%,AUCが28%増加した。
オキシコンチン®TRの添付文書
そのため、服用タイミングは食後又は空腹時のどちらかに決めて服用する必要がある。
普段は空腹時の服用だった人が食後に服用した場合は、状態を慎重に観察して副作用の発現に十分注意すること。
オキシコンチン®錠→オキシコンチン®TR 錠へ切り替え時の注意点
食後(高脂肪食)条件下では、オキシコンチン®TR錠はオキシコンチン®錠よりも血中濃度の上昇を認められた。
オキシコンチン®錠からオキシコンチン®TR錠への切り替え時に食後投与とする場合は、血中濃度が上昇する可能性があるため、眠気等の患者の状態を十分に観察しながら切り替える必要がある。
服用時は、口腔内で水分を含みゲル化・膨張するために速やかに十分な量の水で飲み込むように説明すること。
オキシコンチン®TR錠の一般名処方の記載方法
【般】オキシコドン徐放錠5~40mg(乱用防止製剤)
オキシコンチン®TR 錠の推奨される廃棄方法
医療用麻薬の廃棄方法については、管轄の薬務課または保健所の指示に従うのが原則。
参考までに、 以下の方法が考えられる。
1:錠剤を焼却する。
2:粘着力の強いガムテープなどで錠剤を包み、錠剤が見えない状態にして通常の医薬品と同様に廃棄する。
注意点として、水やエタノールで溶かすことはできず、ゲル化するため溶解による廃棄は困難である。また、非常に固く粉砕が困難であるため、ミキサーを使用した廃棄は行わないこと(刃がかけることがある)。
参考:
オキシコンチン®錠添付文書
オキシコンチン®TR錠添付文書
オキシコンチン®TR 錠、オキノーム®散のよくあるお問い合わせ
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