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胃、ピロリ菌、逆流性食道炎

タケキャブ、ネキシウム、ガスター:作用機序、特徴、違い

胃酸分泌の作用機序のおさらい

ヒスタミン、アセチルコリン、ガストリンが胃壁細胞の受容体に結合することで胃酸が分泌される。
この反応の最終過程では、プロトンポンプという酵素(H+K+-ATPase)が関与し、胃壁細胞内から分泌細管腔に H+が放出され、それと同時にKが取り込まれる。
分泌細管腔に放出されたH+Clと結合し、HCl(=胃酸)となって分泌される。


【画像はネキシウムIFより引用、編集】

 

H2ブロッカーの作用機序と特徴、適応外処方

<作用機序>
胃壁細胞のH2受容体を遮断することで、胃酸分泌を抑制する。

<特徴>

H2ブロッカーの特徴

①効果発現は早いが、PPIほど強力には胃酸分泌を抑制しない。
②通常1日2回服用する。
③タケキャブ®・PPIと異なり、腎機能が低下している患者には注意。
④ピロリ菌感染の有無によって、効果に差が出る。
⑤適応外処方をされることがある

●排泄経路
H2ブロッカーはラフチジン(プロテカジン®)を除いてすべてが腎排泄型の薬剤のため、ラフチジン以外のH2ブロッカーは腎機能に応じた用量調節が必要
特に高齢者、透析患者には注意が必要である。

ただし、ラフチジンは肝代謝型薬物とされているが、バイオアベイラビリティが不明のため腎機能低下時の正確な投与設計が不可能とされている。
そのため腎機能低下時や透析患者では低用量で慎重に投与する必要がある。

参考:ラフチジンを透析患者に使用すると、腎機能正常者と比べてT1/2とCmaxが約2倍に上昇、AUCが約3倍に上昇したという報告がある。

 

クレアチニン値
シメチジンはクレアチニンの尿細管分泌を抑制するので、腎機能が低下していなくても「見かけ上血清クレアチニン値が上昇する」ことがある。
これを知らないと腎機能評価が正しく行えない場合があるので注意が必要。

 

ピロリ菌の感染の有無による影響
なお、H2ブロッカーは、ヘリコバクター・ピロリ感染の有無によって効果に差がでることが知られている。

感染陰性だと、H2ブロッカーを2週間連続で内服するとH2ブロッカーの胃酸分泌抑制効果が減弱(J Gastroenterol Hepatol. 2003 Jun;18(6):678-82.)。

感染陰性でPPIとH2ブロッカーを連用した場合、H2ブロッカーの夜間の強力な胃酸分泌抑制作用は2週間程度で減弱(J Gastroenterol. 2003;38(9):830-5.)。

陽性例ではH2ブロッカーの効果は減弱しない(Aliment Pharmacol Ther. 2004 Sep 1;20(5):559-65.)。

 

●適応外処方
シメチジン(タガメット®)
大腸がん、その他のがんの転移抑制を目的に適応外使用されることがある。
シメチジンには、がん細胞転移に関わるE-セレクチンの発現を抑制する報告があり(Oncol Rep. 2009 Dec;22(6):1293-7.)、この作用はH2ブロッカーの中でもシメチジンに特有のもの。

また、肩関節石灰沈着性腱板炎にも使用されることがある。
副甲状腺細胞膜のH2受容体に作用し、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌抑制を介するカルシウム代謝に作用する機序と、骨格筋の血管に存在するH2受容体に作用し末梢でのPTHの代謝に影響する2つの経路が考えられている(肩関節 2011;35巻第3号:907-910)。

 

ファモチジン(ガスター®)
抗ヒスタミン薬(H1ブロッカー)で効果不十分な蕁麻疹に使用されることがある。
シメチジンと同じく、石灰沈着性腱板炎に使用されることもある。

 

ラフチジン(プロテカジン®)
適応外で、抗癌剤による口内炎、舌痛症、末梢神経障害の緩和に使用される。
カプサイシン感受性知覚神経を介した作用により効果があるものと考えられている。

 

ニザチジン(アシノン®)
消化管運動亢進作用唾液分泌促進作用がある(IFより)。
唾液分泌が少ない人に、適応外で使用されることがある。
また、「胃酸分泌抑制作用+消化管運動亢進作用」を期待して、機能性ディスペプシア(FD)に使用されることもある。
消化管運動亢進作用は他の胃酸分泌抑制剤にはない特徴である。

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ロキサチジン(アルタット®)
胃粘液増加作用を持っており(添付文書より)、胃粘膜を保護するとも言われている。

 

 

PPIの作用機序と特徴

<作用機序>
吸収されたPPIは、胃壁細胞の分泌細管腔に分泌される。
分泌細管腔は酸性領域で、この酸によりPPIは活性体(スルフェンアミド体)に変換される。
活性体となったPPIはプロトンポンプのSH基と結合し、S-S結合を形成することで酵素活性を阻害し、H2ブロッカーよりも強力に胃酸分泌を抑制する。

<特徴>

PPIの特徴

①十分な効果発現には数日かかるが、胃酸分泌抑制作用は強い。
②通常1日1回の服用だが、1日2回服用の方が効果的。ただし適応があるのはパリエット®のみ(ピロリ菌除菌療法を除く)。
③代謝酵素の影響を受ける薬剤がある。
④夜間の胃内pHを十分に上げられない現象が起きることがある。
⑤ネキシウム®は1歳以上の幼児・小児にも使用可能。

作用発現時間
オメプラゾール(オメプラール®、オメプラゾン®)やランソプラゾール(タケプロン®)は、投与開始から2~3日後に胃内pHが上昇し、安定状態になるのに4~5日間かかるとされている。

一方、ラベプラゾール(パリエット®)は初日から胃内pHが上昇し、3日程度で安定状態になる。

【参考】
CYP2C19遺伝子多型homo・heteroEMに対して、
ラベプラゾール10mgは、ランソプラゾール30mg・オメプラゾール20mgと比較して、投与1日目・2日目・3日目ともに、
「1日24時間の中で、胃内pHが3以上の時間(pH3 holdingtime)」の割合が高い傾向にあり、投与初日から速やかな効果を発揮する(メーカー確認)。

胃内pHが3もしくは4以上の時間が長いことはとても大切で、潰瘍治癒、胃食道逆流症(GERD)の治癒に大きく関わっている。

エソメプラゾール(ネキシウム®)も効果発現が早く、20mgの服用に対して、逆流性食道炎の胸やけ症状の消失には1.5日(中央値)という結果であった(メーカー確認)。

 

プロトンポンプの阻害方法と胃酸分泌抑制時間
オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾールは、プロトンポンプを不可逆的に阻害する。
プロトンポンプの半減期は34日間のため、これらの服用を中止しても、数日間は胃酸分泌抑制が持続する。

一方、ラベプラゾールはプロトンポンプを可逆的に阻害するので、服用中止後の胃酸分泌再開は速やか。

 

●PPIの1日2回投与について
ラベプラゾールは、1日1回20mgよりも1回10mgを1日2回服用する方が1日を通して強い胃酸分泌抑制作用を発揮する(Aliment Pharmacol Ther. 2004 Jan 1;19(1):113-22.)。
1日量は同じでも分割した方が効果的なのがポイント。

また、8週間以上常用量のPPIを使用しても効果不十分の逆流性食道炎患者に、ラベプラゾール1回10mgを1日1回と、1回10mgを1日2回を投与した試験がある。
結果、52週時の非再発率は1回10mg1日1回の群では44.8%、1日2回の群では73.9%と、1日2回の群で優位な再発抑制効果がある( 2018 Jul;53(7):834-844. )。

PPI抵抗性の逆流性食道炎に対してPPIの1日2回投与がされることがあるが、2020年8月時点、1日2回の内服の適応はパリエット®のみ(ピロリ菌除菌の用法を除く)。

 

代謝酵素(CYP2C19など)の影響
オメプラゾール:CYP2C19が主で、CYP3A4でも若干代謝される。
ランソプラゾール:CYP2C19とCYP3A4で代謝される。
ラベプラゾールエソメプラゾール:CYP2C19で代謝されるのはごくわずか。

エソメプラゾールは、ラセミ体であるオメプラゾールの一方の光学異性体(S体)のみからできている。
S体のみにすることで、CYP2C19の影響が少なくなり、効率的に薬剤が血液中に移行できるようになった。

CYP2C19には遺伝子多型が存在し、代謝速度の違いから以下の3つに分けられ、日本人の割合は次のようであった(参考:日本内科学会雑誌 第101巻 第2号・平成24年2月10日)。

代謝の早いhomo-EM(extensive metabolizer):30%
代謝が中間のhetero-EM:55%
代謝の遅いpoor metabolizer(PM):15%

オメプラゾールは特にCYP2C19の影響を受けやすいため、EMの人には効果が十分に得られていないケースや、逆にPMの人には効きすぎている(投与量が多すぎる)可能性がある。

●PPIは酸に不安定だから腸溶性にしているのに、酸でPPIが活性化されるとはどういうこと??

体内に吸収されたPPIは血流に乗って壁細胞へ達し、壁細胞の分泌細管において酸に触れることで活性化し、胃酸分泌抑制作用を発揮する。
しかし、PPIは酸性環境下では極めて不安定ため、壁細胞に到達する前、つまり胃の中で酸にさらされると失活する。

既存のPPIは腸溶性の製剤にすることでこの問題をクリアしている。

なお、壁細胞の分泌細管に到達したPPIも酸にさらされ不安定となり、分泌細管に長く留まることができない。
そのため、PPIの血中濃度が低下すると、次々と分泌細管の膜上に移動してきたプロトンポンプを阻害することができない。

このことが、PPIを朝1回服用しても、夜間の胃酸分泌を十分に抑制できないことがある理由の1つだと考えられている。

 

ボノプラザンの作用機序と特徴

<作用機序>
ボノプラザン(タケキャブ®)はカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)に分類され、PPIと同じくプロトンポンプを阻害するが、作用点が異なる。

ボノプラザンは、カリウムイオンに競合的な様式でH, K-ATPaseを阻害
その結果、胃壁細胞内から分泌細管腔へのHの分泌が阻害され、胃酸分泌が抑制される。

ボノプラザンは酸性環境下でも安定なため、分泌細管に長時間残存が可能。
このため、血中濃度が低下したとしても、新しく分泌細管の膜状に移動してきたプロトンポンプも阻害することができ、その結果、PPIよりも速やかで優れた胃酸分泌抑制作用を発揮すると考えられている。

<特徴>

タケキャブの特徴

①効果発現は3時間ほどと早く、胃酸分泌抑制効果は強力。
効果発現の速さ:H2ブロッカー>タケキャブ>PPI
効果の強さ:タケキャブ≧PPI>H2ブロッカー
②主にCYP3A4で代謝され、CYP2C19ではほとんど代謝されない。
③20㎎を服用すると投与初日から、夜間の胃酸分泌抑制効果が得られる(IF参照)。
逆流性食道炎の治療期間はPPIの半分の4週間
⑤ピロリ菌の除菌効果が高い。

タケキャブ・PPIの通常の治療期間

(画像はタケキャブのIFより引用)

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